柔く指を噛んだ

うっすらと桃色になって、少し痛む

白い肌に映えて美しいなと仙蔵は思った

もう少し強く噛んだら更に赤くなって血が滲んだ

うっとりとそれを見つめ血が止まるとまた噛んで

それを繰り返すことに没頭した


身体の至るところに歯形が出来たけれど

左肩の歯形から滲む血だけは止まらなくて

噛んでもない赤い歯形がそこから次々と広がって

ついには背中一面花が咲いた様になった

歯形一つ一つの痛みは小さなものだけど

集まってあるもんだから痛くて頭がクラクラした

それでも仙蔵は幸せであった


美しいものから生まれる美しさは

何物にも代え難いと信じて疑わない人だから

幸福感でいっぱいになったに違いない

とても幸せで 可哀相な仙蔵


肌が捲れて歯形の花が「本当」になってゆく

真実の美しさになってゆくよ

欲望も心も夢も希望も持ち合わせない幸せなものになるよ

この世で一番穢れのないものになってゆく

涙を見せてはいけないよ、だって仙蔵は幸せだから

美しいことが全てな彼は「人」から「もの」になる自分の変化を

それはそれは愛おしそうに見守るから

誰も何も云えなくなってしまう



美しさの追求の為に全てを捨てた気高い花にキス

永遠の美しさの象徴 去り際 敬礼






気高い心は折れてくれない

(仙蔵)